コンビニ


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深夜や祝日、電池や録画用DVDが足りないのに気づくことがある。急に決まった出張に持っていく歯磨きや下着が必要になるかもしれない。そんな時、日本ではコンビニに駆け込んで用を足すことができる。365日24時間営業、限られたスペースに生鮮食料品から日用品まで、味や鮮度の落ちた食べ物がいつまでも棚に並んでいないように、品切れにならないようにと、在庫や品質の管理にかなりのエネルギーが費やされている。しかも、都会ならほんの数分歩けばたどり着くことができる。

 フランスの友人たちには、こういう店のあり方自体が理解しづらいようだ。彼らに説明する時にはいつも、「24時間営業のスーペレット」と言っている。「スーペレット」はいわばミニスーパーで、7時から夜7時半くらいまで営業している食材が中心の店。

 パリならば、通称「街角のアラブ店」という移民が経営する小型食料品店がけっこうたくさんある。夜?時頃まで買い物できるのはよいのだが、あんまり清潔でないし、天井まで品物が積み上げてあったりと、買う人の身になっていないから、普通の店が休んでいる日曜日に日用品が切れた時か、夜遅くまで帰宅できない1人暮らしの人しか利用しない。

 フランスにもコンビニがあればよいとは思うの。しかしたとえ24時間営業はできても、日本みたいなきめ細かな運営ができるかどうか……。コンビニそのものが、日本ならではの文化なのだ。


Posted at 08:44 午後     Read More  

 アラーキー


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 アラーキーこと荒木経惟の大型展覧会が、海外で定期的に開かれているのをご存じだろうか。

 アラーキーが名高い理由の一つは、言うまでもなく、女性のヌードを数多く手がけているからだ。おおっぴらに眺めるのがはばかられるヌードでも、有名な作家の「作品」として美術館に展示されれば、胸を張って観賞することができる。そしてアラーキーが批判を浴びるのも、同じ理由からだ。?年の暮れにはベルギーで、個展に反対する人が、美術館の外壁に飾られた大型ヌード写真に火炎瓶を投げつけたこともあった。

 今年9月にフランスで、アラーキーについてのエッセーを出版した小説家・評論家のフィリップ・フォレストが先月末、荒木と対談した折に、僕はナマ・アラーキーと対面する機会を得た。

 フォレストは、ユリやランなどの花や腐った果物を官能的に撮るアラーキーの「目」、自分の人生を私小説のように記録・演出する方法、縛られた女性などをタブーなしに真っ正面から撮る姿勢を高く評価している。僕もフォレストと同じ意見だ。

 しかし会ってみたアラーキーは、こうやって格調高く評価されることを、必ずしも好まないように見えた。演壇の上からさり気なく「僕は、『エロス』ではなく、『エロ』写真を撮り続けたい。エロでなければ写真にならないし、人生もない」と強調した。こういう気取らない反応が、彼にはとてもよく似合う。


Posted at 04:35 午後     Read More  

 日本国際検定試験



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 文化の日、「国際日本検定」という試験を受けてみた。日本に関心を持つ外国人に、日本の文化や社会についてきちんと説明できる知識が身についているか、試してみよう、というのがこの試験の趣旨だ。思い切って、高校生以上を想定した「上級」に挑戦した。全国でおよそ千人が受験したそうだ。東京会場には40人弱の老若男女が集まったが、外国人の受験者は、見たところ僕だけだ。

 さて、試験開始。国語、地理、歴史、文学、風俗、経済、政治、観光など、問題はさまざまな分野から出される。100問に与えられた時間は90分だけ。正直言って時間も知識も足りなかった。小中学生向けだという「初級」を受けておけばよかったかしら。

 ただ、負け惜しみじゃないが、一つだけ言わせてもらいたい。出題と趣旨がちょっとずれてるんじゃない? たとえば一条天皇の中宮彰子(「源氏物語」の作者紫式部が仕えた人だ)が誰の娘なのか、外国人に説明する機会がどれくらいあるだろうか。日本に20年以上暮らす僕の実感では、外国人はたいてい、そこまで細かくはない知識——「源氏物語」の作者は誰か、で十分満足するだろう。

 この疑問を主催者にぶつけてみたら、「今年でまだ2回目、試行錯誤の段階なので……」とのこと。本当に国際交流に役立つ試験を目指すなら、外国人のニーズを改めて確認したほうが、もっといいものができると思った。僕も喜んで情報提供するつもりだ。


Posted at 04:29 午後     Read More  

雄呂血


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先日、無声映画「雄呂血」を見る機会があった。1925年公開。「バンツマ」こと阪東妻三郎主演のチャンバラ映画だ。チャンバラ大好きな僕としては、とても見たかった作品だ。しかも今回は弁士付き。

 上映直前に、北京オリンピックでフェンシング男子フルーレ個人で銀メダルを獲得した太田雄貴選手のデモンストレーションが行われた。太田選手がスクリーンに向かって剣を振るうと、「OROCHI」の文字がスクリーンに現れるという趣向。チャンバラ映画なら剣道の方がふさわしいんじゃない?と思わないでもない。集まった映画ファンも、気のせいかちょっと意外そう。が、それはそれで楽しんでいたようだ。フェンシングをこの目で見るのは初めての人が多いに違いない。だって夏前に、フェンシングが人の集まるイベントに登場するなんてなかったもの。

 日本人って本当に、旬の話題に敏感だな、と思う。メダル以来、「フェンシング王子」太田選手の露出度が急速に上がり、テレビのバラエティーやクイズ番組でも、フェンシングの話題が、すごく増えたような気がする。欧米人はこのような場合、もう少し淡々としている。あらゆる機会を逃さずに時々の「はやりもの」を取り入れて、人集めや話題作りをするのは日本ならではの現象だ。日本企業が世界で成功しているのは、こういう日本人の素早い行動力とも関係あるんじゃないかと思う。


Posted at 04:24 午後     Read More  

 来日記念日


EtienneFirstTimeJapan_W.jpg  私事で恐縮だが、実は先週の土曜日は、僕が来日して22年がたった記念すべき日(?)だった。人生の半分を日本で過ごしたことになる。日本は僕にとっての第2の祖国になった。こんなに長く暮らすことになるなんて、来日した時にはまったく想像していなかった。せいぜい4〜5年東京に滞在したら、帰国するか、他のアジアの国に移るというのが人生計画だったが、大はずれだ。どうして日本での生活が、僕はこんなに気に入ってしまったのだろう?

 米国での留学経験があったが、日本で見いだした心地よさを、少なくとも米国では見つけられなかったものだ。同じ「先進国」でも、犯罪、麻薬や失業問題は、日本でははるかに少なかった。パリで育った僕にとって、東京の治安の良さは一種のカルチャー・ショックだった。男性ならともかく、真夜中の繁華街を女性が1人で歩くなんて、パリでは考えられないのに、東京ではごく普通のこと。

 スラムや貧富の格差、ホームレス問題……母国にいた頃の僕の日常は、こういう暗い課題に覆われていた(最近は日本でも耳にするが)。そんなフランスの若者に、日本は一種のエルドラド(理想郷)に思えた。

 フランス語とは似ても似つかない言葉を毎日話す、靴を脱いで家に入る、はしを使ってご飯を食べる、そんな生活スタイルに慣れるのは、確かにちょっとたいへん。でも、暮らし心地の良さを考えればへっちゃら、なのだ。


Posted at 06:06 午後     Read More  

 渋谷のスクランブル交差点


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  1日に90万人が通過すると言われる渋谷駅前のスクランブル交差点。東京人にとっては、単なる人通りの多い交差点に過ぎないだろうが、外国人にとっては、この交差点を渡らなければ東京を観光したとはいえないとされる、日本を象徴するスポットだ。交差点に立つビルの2階から人波を写真に撮るのが定番らしい。

 日本の人口密度に慣れていない海外からの旅行者はまず、通行人の数に圧倒される。そのうえ、大型のスクリーンが3基も設置されて、プロモーション映像を流したり、スポーツを中継したり、通行人を映し出したりしている。騒々しくて落ち着かなくて、東京のエネルギーを感じられる場所だ。

 外国人の映画監督が東京で映画を撮る時には、必ずここをロケーションで使うというのもうなずける。ソフィア・コッポラの『ロスト・イン・トランスレーション』(2003年製作)やこの夏公開されたオムニバス映画『Tokyo』にもこの交差点が登場した。それならいっそ、外国人にも役に立つ情報を発信する、なんてのもいいかも。

 この夏、ロンドンの繁華街にある交差点「オックスフォード・サーカス」が、渋谷を手本にした「東京式」に変身すると発表された。ここにもやはり、スクリーンが設置されるのだろうか。としたら、東京とロンドンのクロス情報を、それぞれの大型スクリーンを通じてシェアするなんていうのはどう? クールではないかと、僕は勝手に思っているのだが。


Posted at 05:59 午後     Read More  

 ネオンサイン


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東京の街の夜を彩るネオン。日本語の読めない外国人にはどう見えるのだろう。考えたことありますか? 僕も初めて来日した時はそうだったが、意味不明のクニャクニャした色の並びにしか見えない。店の名前だろう、くらいのことはわかるのけど……。

 証拠に、というのもなんだが、写真をご覧下さい。本来文字の持っている意味を捨て、形や色の組み合わせだけを無数に増殖させて、外国人が東京で感じる混沌状態を表現したつもりだ。いかが?

 日本語の全く読めないフランスの友人によると、東京という街のエネルギーを一番感じるのは、街でこういう意味不明のネオンサインを眺めている時だそうだ。と同時に、最初から意味がわからないと、理解する努力も省けて脳が休まる、という。ちょっと意外な感想だ。意識したことはないが普段、僕らの目は街が発信するサインを読むのに一生懸命働き、絶え間なく情報を脳に焼き付けているのだろう。

 とはいえ看板は、夜目にも明るい道標だ。読めれば迷子にならずに目的の店にたどりつける。東京を訪れる外国人が増えている昨今だ。これからは、ローマ字を交えた看板も欲しいかも……韓国やタイを旅して同じような混沌状態を感じた人なら、賛成してくれるに違いない。実は今、休暇でローマにいる。あんまり得意でないイタリア語に囲まれて、ちょっとフランス語と日本語が恋しくなったエチエンヌでした。


Posted at 05:46 午後     Read More  

 プール


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突然ですが、今週は「エチエンヌのプールジャパン」(?)とさせてください。

 日本でもフランスでも、真夏の暑さから逃れるため、涼を求めてプールを利用する人は多い。だが、初めてお互いの国のプールで泳ぐ時には、戸惑うに違いない。

 フランスのプールのほとんどは、「速く」「ゆっくり」「長く」といった習熟度別のレーンなどなく、飛び込みもボール遊びも自由。スイミングキャップを被らなくてOKのところもある。縦横斜め好き放題に泳ぐ人々の間を縫ってうまく泳ぐにはコツが必要だ。目を閉じて泳ごうものなら、必ず誰かとぶつかる。プールサイドから飛び込む子どもたちをいつもに気にしていなければならない。黙々と泳ぎ込みたい人には不向きなプールだ。

 日本のプールは、とにかくやたらと細かい決まりが多い。キャップの着用に始まって、泳ぐ方向、子どもと水遊びしてよいエリア、1時間ごとの休憩……。少しでも疑わしいふるまいにはすぐに注意が飛ぶ。すいてる時だったら、みんなが勝手な方向に泳いだって、別に危なくないじゃない、と思わないでもないのだが……。

 完全管理の日本と完全自由なフランスのプール。組織に身を委ねる日本人と自己責任で行動するフランス人にも似る。どちらかが絶対に良いとは言い切れない。まあ、プールで涼をとりたい気持ちは一緒。お互い頑張って猛暑を乗り越えましょう。


Posted at 04:26 午後     Read More  

 交番


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  海外を旅行中、道に迷った経験のある人は多いだろう。日本でならば、交番に駆け込むのが一番の近道。「万が一の時や迷子になった時には、交番の警察官に相談するように」。これは、来日した知人が1人で観光へ出かける時に必ずアドバイスすることの一つだ。「へぇ?日本ではそんなことを警察に相談するの?」と驚かれることが多い。

 交番は、日本以外のほとんどの国に存在しない、日本ならではの制度だ。たとえばフランスの一般市民にとって、警察は遠い存在。刑事事件でも起きない限り、警察なんかに声をかけないで済ませるのが普通。10年近く前だが、ジョスパン首相の時代に交番のような仕組みを導入しようとしたことがあった。しかし、02年に政権が交代すると、内務大臣に就任したサルコジ氏は、「警察官の役割は市民と仲良くすることではなく、捜査や犯罪者の逮捕だけだ」と断言して、フランス版交番制度の試みを廃止してしまった。しかし、昨年大統領になったサルコジ氏は、市民に近い警察の良さをやっと認め、交番に似た制度を導入しようとしている。

 日本で交番の前を通ると、老若男女を問わず、市民が警察官に相談している姿をしばしば見かける。市民と警察の信頼関係を、改めて感じることのできる光景だ。日本の治安は先進国の中で最も良いと言われているが、それはきっと、お隣の交番のお巡りさんのおかげでもあるだろうなぁと思う。


Posted at 04:21 午後     Read More  

 親権


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 離婚した後も子供と面会・交流する権利の確立を求めるデモを取材した。日本では今、離婚後の子供の親権は、どちらか一方の親が持つことになっている。その結果、親権を渡した親が、我が子と会えなくなってしまうことが珍しくない。離婚後も子供への責任を果たし続けたいと考えている人は多いだろうし、子供にとっても、別れた親の顔も見られないのは、よいことではないだろう。

 デモには日本人の配偶者と離婚した外国人の参加者も多かった。あるフランス人男性は4年前に離婚して以来、現在8歳になる娘と一度も会えずにいる。調停では週一回会えることになっているが、元妻に一方的に拒否され、娘への誕生日カードすら戻ってきてしまうという。でも、彼にはなす術がない。これってちょっとおかしくない? 例えばフランスでは、家裁の決定を守らず面会を拒否した親には、罰則があるというのに。

 国際離婚では、さらに深刻な問題が起こることもある。元配偶者が子供を日本に連れ帰ってしまい、連絡すら困難になってしまう。子供の国外連れ出しは、「子供の奪取に関するハーグ条約」では犯罪と見なされる行為だ。多くの先進国がこの条約を批准しているが、今のところ日本はまだ。

 親同士が離婚しても、親子は親子。一緒に暮らせない親子にとって何が一番幸福か、あらためて考えてみない限り、日本は子供にとってクールな国とは言えないんじゃない?


Posted at 04:18 午後     Read More  

 行列


 iPhone3G_LancementOmotesando.09CropW.jpg 7月11日、アップル社の携帯電話iPhoneの新機種が世界22カ国で同時発売された。誰よりも早く手に入れたい世界中のアップル・ファンは、数日前から店頭に並び始めた。かくいう僕も発売前日から表参道の店に並んだ1人。17時半過ぎに着くと、すでに200人以上が行列を作っていた。僕の後ろに並んだ若い日本人女性は、なんと社長の代わりに並んでいた。これぞサービス残業! アメリカでは良い並び順をとれた人が後ろに並んでいる人に自分の順番を売っていたそうだが、日本ではそんなことしなくても、部下に頼めば済む。

 今回、さすが日本と感心したのは行列の管理だ。並ぶとすぐ、「トイレ・チケット」なるものが配られた。1回30分、スタッフに頼んで行列から離れることができるチケットだ。なるほど、安心してトイレや買い物に行くことができるから、ストレスがたまらない。そして、登録手続きを素早く済ませるため、開店2時間前の朝5時から、スタッフが登録の事前資料を配っていた。

 僕の前に並んでいた米国人は、朝のうちにゲットしてお昼には飛行機に乗ると言っていた。そして★時にはお店を後にして空港に向かった。こんな日程を平気で組めるのは、万事物事が予定通りに進行する日本だけだろう。行列を通じて、国民性が見えてくる、非常におもしろいイベントだった。


Posted at 04:12 午後     Read More  

 世界平和指数


 

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 日本のことをよく知らない外国人に、「あんなに物価が高い日本でよく暮らしていけるね」と言われることが多い。でも、日本は何といっても平和だ。僕みたいに長年日本で暮らしていれば、それを体感できる。テロや国際紛争の懸念も、露骨な人権差別も、ほとんどない。そんなことはない、という意見もあるだろうが、僕の知っている範囲で言えば、外国と比べてずっとまし。

 5月、英国の経済誌「エコノミスト」の調査部門が、07年に続き2度目の「世界平和指数(Global Peace Index)」を発表した。軍事費、政治の安定、犯罪発生率、男女平等など24項目を分析し、世界で最も平和な国をランキングしたもの。ダライ・ラマやカーター元米国大統領をはじめとするノーベル平和賞受賞者も、支持者に名を連ねている。

 日本は140カ国・地域中5位。去年も同じ順位だった。今年のトップはアイスランドで、最下位はイラク。ちなみに米国は97位で、母国フランスは恥ずかしながら36位。なんと、先進国の中でトップ10に入っているのは日本だけだ。

 だがどうせなら、1位を目指したらいいのに、と僕は思う。先行き不透明と言われている今、悪くない目標では? ただそのためには、女性議員を増やす、有権者の政治参加率を高めるなど、いくつか実現しなければならない課題がある。もし「世界一平和な国日本」が実現したら、とってもクール!


Posted at 04:25 午後     Read More  

 バイクの駐輪場


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クールジャパンを代表する商品ってなんだろう? ソニーのウォークマン? 任天堂のゲーム機? 僕はバイクだと思う。世界のバイク市場を50年以上も断トツリードしてきた「ホンダ」「ヤマハ」「スズキ」「カワサキ」は、海外ではバイクの代名詞になっている。

 「その割に、思ったより街中でバイクを見かけないね」とは、初来日の外国人がしばしば抱く感想。僕もそう思った。だが、自分で乗ってみてわかった。バイクは車以上に、止めておく場所に悩む乗り物なのだ。

 パリでも、車より機動性のあるバイクを愛用する人は多い。専用の無料駐輪場が各地区に設けられているから、どこにでも気軽に乗って出かけられる。しかし東京では、有料無料を問わず、駐輪場自体がほとんど整備されていない。なるべく人の邪魔にならない場所を探して、愛車を止めるしかない。そのうえここ数年は取り締まりが極端に厳しくなり、ライダーは行く先々で、どこに駐輪するか頭を悩ませている。僕だって、悪質な駐車違反は取り締まるべきだと思う。しかし、駐輪場を確保せず取り締まりだけ厳しくして、現状が改善できるだろうか。

 数年前、渋谷区はターミナル駅前などにバイク専用駐輪場をつくった。規模が大きくて料金も安い。バイクも守れるし、通行人も安全だ。こういう場所の確保に乗り出してくれる自治体が増えるのを、みんなが待ち望んでいるに違いない。


Posted at 12:03 午後     Read More  

 電信柱と電線


ElectricPole@Tokyo.16CropW.jpg  多くの外国人は日本と聞くと、いまだにフジヤマ、ゲイシャ、高層ビル、繁華街の鮮やかなネオンサインなどを思い浮かべる。これでいいのか、とはなはだ疑問だが、観光絵はがきくらいしか参考にするものがないと、こういう現実からずれた思い込みが生まれてしまうのだ。

 しかしご存じの通り、日本のマンガやアニメが世界中で親しまれるようになって、日本への理解にも変化が起きているようだ。マンガやアニメには、絶対に絵はがきにはならない日本の日常風景が登場するからだ。学校の校舎の四角い建物、似たようなつくりの一軒家がズラッと並ぶ住宅街、音を立てて上下する踏切、小さな店が軒を連ねる商店街などは、どの作品にも必ず出てくる。そのため、海外のファンは日本に一度も来たことがなくても、かなりリアルな日本を知っている(つもりだ)。

 そんな日本では当たり前の光景の中でも外国人の関心を引くのは、電信柱と電線。柱に取り付けられた変圧器からあちこちに枝分かれして空中を走る電線を、僕は日本に来て初めて目にした。フランスでは電線は地下に埋められていて、普段目にすることはまずない。同じ感想を何人かから聞いたのは、どこにでもあって目につきやすいからだろうか。もし、僕が「日本日常三景」を選ぶとしたら、間違いなくその一つは「電信柱と電線」だ。あとの二つは……まだ考えていない。


Posted at 10:13 午前     Read More  

 広島の千羽鶴


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5月5日、広島平和記念公園にある原爆の子の像は建立50年を迎える。原爆で亡くなった子どもたらのための慰霊碑だ。モデルとなった佐々木禎子さんは2歳で被爆し、10年後、千羽鶴を折りながら亡くなった。僕も子どもの時に、この話を読んだ覚えがある。

先日、その広島に行く機会があった。像の前で写真を撮っていると、自分たちが折った千羽鶴を飾りに京都から来た入たちがいた。像の前で記念撮影をしている彼らに、外国人観光客が声をかけている。千羽鶴の意味を尋ねたらしい。彼らは丁寧に説明し、その後、一緒に記念撮影をしていた。

僕が初めて広島平和記念資料館を見学したのは約20年前。各地で修学旅行中の中高生から片言の英語で、rハロー」「ハウアーユー?」と元気な声で迎えられた。子どもたちには欧米人はみんな英語を話すアメリカ人に見えるんだろうなと、ちょっとおかしかった。

でも、広島で平和記念資料館を見学していた中学生たちは、少し様子が違った。歴史の重さに圧倒されているのだろうか、僕を見るまなざしが冷たい。当時売られていた「I'm not American!(僕はアメリカ人じゃない!)」というTシャツを着たいと思うほどだった。僕が日本人から欧米人に対する警戒感を感じたのは、これが最初で最後。つらい体験だった。

今年ももうすぐこどもの日。世界中の子どもたちが幸せに暮らせますように。


Posted at 09:48 午前     Read More  

 3列乗車



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先週、フランス人のビジネスマンを10人ほど連れて、東京を動き回った。朝から晩まで彼らの業界に関連する店舗や展示場を見学し、日本の最新事情を紹介したのだ。ずっと電車で移動したが、かなり目立つグループだったことだろう。

 初めて東京の電車を体験する彼らは、「なんだ、全然込んでいないじゃないか」とがっかりしていた。東京の電車は超満員で、白い手袋をした駅員が乗客の背中を押しながらドアを無理やりに閉めるというのは、世界的に有名な話だ。それを目の当たりにするのを楽しみにしていたらしい。僕はあえてラッシュアワーを避けて予定を組んだのだが……。

 その彼らが驚いていたのは、電車が到着するまでの間、3列に並んで待つ人々の姿だ。「フランスではあり得ない! どうしてこんなにおとなしく整然と並んでいられるんだ! 並ぶのが好きなのか?」

 僕ら外国人一行はといえば、電車が来るまでホームの真ん中で突っ立ったまま。列の後ろにつくなんてことはしなかった。

 日本人にとって、公共の場で順番を守って並ぶのは当然で、この基本的なマナーを守らない人は非常識と思われる。フランス人にとっては、どういう順番で電車に乗るかなんてどうでも良いから、わざわざ並ぶほどのことではない。同じ「常識」でも、かくも隔たっているわけだ。

 僕としては、並ぶ方がクールと思うのだが。僕が日本人的になったからかしら?


Posted at 09:10 午前     Read More  

 ガソリンスタンド


  来日する欧米人にとって、日本のガソリンスタンドは、日本ならではのきめの細かいサービスを実感させられる場所の一つだ。たとえば、給油している間に窓ガラスや灰皿などを掃除してくれる。給油が終わって車がスタンドから出る時には、お客の車が安全に道路へ戻れるよう、元気な声で車を誘導し、走行中の他の車を一瞬止めてくれる。お客の大半は、おそらく2度と会う機会のない人であるにもかかわらず、だ。

 「お客さんのために一生懸命!」というパフォーマンスがこんな日常的な場面でもみられるなんて、さすが日本だと、みんな感心している。

 周知の通り、欧米のガソリンスタンドはセルフ式がほとんど。運転手が自分で給油しなければいけない。すっかり日本のサービスに慣れた僕は、フランスに帰るたびに、面倒くさいなあ、と感じていた。しかし、最近は日本でも、セルフ式スタンドが大分増えてきたようだ。コスト削減のためか、システムの合理化のためか、原因は分からないが、せっかくの「良いサービス」が少しずつ消えてしまうのはとても残念だ。

 先日、とあるセルフ式スタンドでのこと。仕方がないからしぶしぶ自分で給油したら、支払いの時に面白いものを見た。なんと、スロットマシンだ。同じマークを三つそろえたら、ガソリン1リットル当たりの単価が少々安くなる。遊び心がとても気に入った。サービスマンは消えたけれども、サービス精神はまだ残っている。クール!


Posted at 09:00 午前     Read More  

 都内の温泉


TokyoRotenburoBlurCropW.jpg 年に数回、パリから東京へ出張してくるフランス人の友人がいる。彼はどんなに短い滞在でも必ず、東京のど真ん中にある温泉施設を訪ねる。商談やミーティングの合間を狙って、周囲には「重要な会議があるから」と断り、僕や他の友人を突然携帯で呼び出す。「ねえ、今から一緒にお風呂に入らない?」

 そして2時間ほどサボって大浴場や露天風呂を楽しむわけだ。「ここは僕のオアシスだ。4日間の出張で温泉に足を運ぶのは難しいと思っていたが、東京に温泉ができてからやみつきになった。飛行機に乗っている時から楽しみにしている。どうして欧米人は、こんなクールなリラックスの方法にいまだに気づかないのだろう?」

 彼の夢は、こういう温泉施設を、パリを一望に見渡すのモンパルナス・タワーの高層階に設けることだ。一緒にお風呂に入るたびに、真剣にビジネス・プランについて話し合う。来場者は1日何人、入場料は1人いくら、運営費にどれくらいかかるか……今のところ実現のあてはまったくないから、ただの与太話にすぎないが、話は尽きない。

このように日本の温泉施設に魅了された友人は彼だけではない。長年日本に住んだもう一人の友人は、引退を契機にパリから地方へ引っ越し、広い敷地の隅に五右衛門風呂を設置しようとしている。温泉ではないが、せめて自然を楽しみながらお風呂でボッとしたいようだ。日本の風呂文化、海外でも受けるかも。


Posted at 08:39 午前     Read More  

 ラジオ体操


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  ドキュメンタリー映画製作のため、フランスから来日した監督といっしょに関西に出張中だ。毎日、面白いものを取材している。

 先日はラジオ体操の音楽に合わせて動く小型二足歩行ロボットを撮影した。日本人なら最初の音を聞いただけでピンとくるが、ラジオ体操をもちろん知らないフランスの人々には、これから何が始まるのか予測するのは不可能だ。だから本物のラジオ体操も撮影して、ロボットの映像に合わせて使えればいいと思った。

 幸い宿泊先近くの公園に、冬でも毎朝6時半からラジオ体操をしているグループがいるとのこと。翌朝、撮影スタッフ全員5時起きで公園に向かった。しかし、早朝の公園には、なぜか誰もいない。寒さと、撮れないんじゃないかという不安で震えていると、開始直前になってようやく、運動着姿の中年の方々が十数人現れた。お互いに簡単なあいさつを交わし、すぐに体操が始まる。僕たちはカメラを回し、熱心に体操する姿を追った。

 一日を元気に過ごすための、10分間の体操。何十年も前から毎日、公共放送が決まった時間に音楽を流し、その時間に合わせて、公園などに集まって体操する人たちが全国にいる。フランスでは考えられない光景だ。監督はこの映像を通じて、日本の国民性も直観できる気がするとうなずいていた。僕たちにとっても充実した10分間だった。

 夜型の僕に、5時起きはつらかったが……。


Posted at 08:28 午前     Read More  

 成人式


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 去る14日、渋谷区役所で行われた成人式へ取材に出かけた。会場前では、華やかな振袖やスーツ姿の新成人たちがにぎやかに盛り上がっていて、報道記者の他、外国人観光客も、普段なかなか見られない着物姿の若い女性へレンズを向けていた。

 「成人式」という行事は、欧米には存在しない。昔、僕が18歳で「大人」になった時も、個人的には嬉しかったが、とりたてて行事があったわけではない。当時はなんとも思わなかったが、日本に来て成人式の存在を知った時には、ちょっとうらやましかった。
 それにフランスでは日本のように、新しく選挙権を得た人に、黙っていても「選挙のお知らせ」が届くわけではない。自分で役所に行って投票権の申請をしなければ、選挙権を行使できない。社会的な責任を感じる、とても孤独な作業だ。
 一方、日本では成人の日は全国的な祝日で、自治体をあげて成人式を行う。大人社会への第一歩を不安とともに期待も持って歩み出せそうな気がする。
 この大事な日に会場前では、日本共産党の街頭演説が行われていた。ワーキングプア、格差社会など、若者たちにとっても身近であるはずの社会問題を、新成人に少しでも意識してもらおうとしているのだろう。
 お互いの晴れ姿を写メールで写すのに一生懸命だった新成人の皆さんに、そのメッセージは届いたかしら? 晴れ着を脱いだ明日は大丈夫かしら?

Posted at 10:23 午後     Read More