一泊2食付きのホテル


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 先日、久しぶりに来日した両親に温泉を体験させた。熱海に予約した宿は、日本では一般的な1泊2食付き。部屋に着くとほどなく、夕食が運ばれてきた。

 日本に何度か来たことあるから、日本食には慣れている。しかし「部屋で食べる」という事態に両親は最初、ちょっと驚いたようだった。欧米では(日本も同じだが)、ホテルのレストランは割高だし、あんまりおいしくないこともある。外の店で食事する方が普通だからだ。しかし、移動で疲れている時に、もう1回外に食事に出るのは確かに面倒くさい。父も「まわりの人を気にしないで、家族だけで会話できる。くつろげるね」と感心していた。

 僕の温泉初体験は、来日してまもない頃だから、もう20年くらい前。友人に勧められた温泉に車で行った。そこは予備知識のない悲しさ、宿で食事をとらないのが当たり前と思っていた僕は、事もあろうに「素泊まり」で宿を予約してしまった。

 チェックインを済ませてから、もう1回車に乗って、ドライブがてら、おいしいものを食べられそうな店を探したものの、そこは温泉街、あるのはそば屋くらいで、気の利いたフレンチなんか見当たらない(今思えば当たり前だ)。結局、その辺のファミレスに入ってお茶を濁すしかなかった。以来、温泉宿を予約する時には、景色や温泉の雰囲気だけでなく、料理の中身までチェックするようになったのは言うまでもない。



Posted at 09:06 午後     Read More  

 築地の競り見学禁止


  来年の1月17日まで、外国人にも人気がある観光スポット、東京・築地市場でのマグロの競りの見学が、禁止されている。年末年始の忙しい時期、マナーの悪い一部の見学者が仕事の妨げになるから、というのが理由だ。

 テレビのニュースで、ベビーカーを押して入場する、生ものであるマグロに素手でさわる、競りの最中にフラッシュをたいて写真を撮るといった、外国人観光客の遺憾な行動を見たときには、正直言って、僕もあきれてしまった。文化の違いでは説明できないマナー違反、市場関係者が怒っても仕方がないし、見学中止にも文句を言えない。

 「旅の恥はかき捨て」という日本語もあるように、観光客のマナーの悪さは昔から、世界中の観光地を悩ませている。しかし、生な異文化体験は観光の基本というのも本当だ。寿司や和食を「クール!」と感じ、その現場である築地を自分の目で見て体験したい人々がいるのは、築地が重要な観光資源でもあるということ。それも忘れてはいけないのではないか。

 すでに注意事項などを書いた外国語のパンフレットは用意されているという。それに加えてたとえば、中国語や英語を話せるガイドのツアーを設ければ、働いている人に迷惑をかけないで、観光客も築地市場を満喫できるのではないか。年明け以降の対応は未定だというが、ぜひ工夫して再開してもらいたい。


Posted at 08:59 午後     Read More  

 冷凍寿司


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 この夏、ローマのスーパーで、冷凍寿司が売られているのを発見した。あまりにもびっくりして、日本人に代わって目が飛び出そうになった。世界の寿司ブームここに至れりという感じだ。

 イタリア人はこんなモノで満足しているのか? それとも、イタリアでも健康な食べ物の代名詞となった「寿司」で、もうけようというメーカーの魂胆なのか?

 そこで、ちょっと考え方を逆転してみよう……イタリア人が日本のスーパーに当たり前に置かれている冷凍ピザを見たら、どういうふうに反応するだろうか? 自国のピッザリアの本物の味を思い出しつつ、きっと心細くこの冷凍ピザを眺めるに違いない。

 僕だって、缶詰の「カマンベール・チーズ」を日本のスーパーの棚で見つけたとき、フランス人としては、思わず写真を撮ってしまったくらい驚いたものだ(20年前の出来事だが……)。こんなモノでフランスワインを開けて、おしゃれなデート気分になれるのかと、素朴な疑問を感じた。ノルマンディー地方で伝統的な製造プロセスを守りながら原産地統制名称「カマンベール」を作っている農家の人たちは、こういう缶詰カマンベール風チーズの存在を知らない方が幸せだろう。

 寂しいことだが、冷凍寿司は日本食の国際化、大衆化のツケ。クールジャパンの延長線として認めざるを得ない。それにしても、一刻も早く本物の寿司の味を世界にお届けしたい気持ちだ……。


Posted at 06:03 午後     Read More  

 ユダヤ教と寿司


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この夏パリに戻った際、おもしろい店を見つけた。ユダヤ系の寿司屋だ。アメリカには数年前からあると聞いていたが、フランスで出会うのは初めて。

 ユダヤ教には「カシュルート」という食事規定があって、食べてよい食物(カーシェール)と食べられない食物(非カーシェール)が細かく定められている。食べてよいのはたとえば、「ひづめが分かれていて反芻する草食動物」と、ウロコのある魚。ウシ、ヒツジ、ニワトリ、タイ、マグロなどはカーシェール。ブタ、カニやエビ、タコ、イカ、貝類は非カーシェールだ。

 今回パリで訪ねた店はカシュルートを全面的に尊重していて、メニューにエビ、タコ、イカなどは一切なかった。「マシュギーアハ」という専門職の人が店員と一緒に働いていて、カシュルートがちゃんと守られているかどうか監視している。それを証明する「ヘフシェール」という証書も、カウンターに置かれていた。これで、ユダヤ教徒も安心だ。

 本物の寿司を知っている僕に言わせれば、さほどの味ではないが、店は込み合っている。ユダヤ教と寿司なんて、日本人からするとおよそ結びつかないが、ヘルシーな食べ物として評価の高い寿司を楽しみたいのは、ユダヤ教徒だって同じ。でももちろん、戒律は守らなければならない。そこでこういう店が登場したわけ。もはや、寿司は日本固有の食べ物ではないと思った。


Posted at 10:47 午前     Read More  

 キャラ弁


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 たまたまネットで見かけて以来、ここ数カ月マイブームのモノがある。キャラ弁だ。ナルトのようなアニメの登場人物やキティちゃんなどのキャラクターをかたどって作るお弁当のこと。一度実物が見てみたくて、先日、お台場のライブハウス東京カルチャーカルチャー(TCC)で行われたキャラ弁イベントへ取材に出かけた。

 イベントでは、子ども用キャラ弁作りのベテランママ3人が、得意なキャラクター作りを実演してくれた。ていねいな解説付き。レシピも公開された。のりを細く切ってキティちゃんのヒゲを作ったり、半熟卵をコリラックマの耳に変身させたり。カワイイ! その日のうちに食べられてしまうなんて、もったいない……。

 フランスの学校や会社にはたいてい食堂があるから、家から弁当を持っていく習慣はあまりない。遠足の時なんかは、ハムサンドとゆで卵にトマト1個ぐらいを紙袋に入れて持っていく。弁当箱を使う習慣がないから、そもそもキャラ弁が生まれる余地がない。

 キャラ弁は、子どもやカレシ、夫など、作って持たせる相手とのコミュニケーションツールでもあると思う。僕がネットで見つけた中には、バースデーケーキをイメージしたお誕生日用の弁当というのがあった。これは正統派。のりをゴキブリ型に切り抜いてご飯の上に載せた弁当(!)も見たことがある。こんなエスプリに富んだいたずらができちゃうキャラ弁って、クール!


Posted at 12:23 午後     Read More  

 パリの「日本食」


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フランス人にとって、日本料理はとても健康的なイメージ。今まさに大ブームで、ここ数年、フランス全土で「日本料理」の看板が見られるようになった。パリだけでこの2年間に300店以上開店したと言われている。しかし、その8割以上は中国人の経営だ。

 それでも、本場日本の和食を経験したことがないほとんどのフランス人は、この「ニセジャポ」(偽和食店)の和食に満足しているようだ。試しに僕も某ニセジャポへランチに行ってみた。ニセジャポの判断方法は、まずメニュー。寿司、刺し身、焼き鳥の3種類が一緒に並んでいれば、ほぼ確実にニセジャポだ。お店に入ると満員御礼。隣のグループはこの店の定番、寿司と焼き鳥のセットを食べていた。見ると、ご飯に甘いタレをかけている。味のない白飯は外国人には食べにくいからだ。

 このフルコースで13.5ユーロ(約2200円)。パリのランチとしては決して高くないが、本物の日本料理店なら、その2倍くらいはするだろう。

 その日、僕は運が悪かったのかもしれない。最後に口にした鯛の寿司で、なんと骨がのどに刺さった。寿司を食べていて、生まれて初めての体験だった。

 僕と同じような不快な経験をした人は、他にもいるに違いない。本物を食べたことない人に、「日本食はもうまっぴら」なんて思ってほしくないのだが、いったいどうすれば、日本の本当のおいしい味を知ってもらえるのだろう?


Posted at 09:22 午前     Read More  

 和風の洋菓子


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「すごいパティシエを発見したよ!」とフランスの某友人。聞けばそのパティシエとは、六本木の東京ミッドタウンにも出店している青木定治さんだった。さっそく彼の店、Sadaharu Aokiを訪ねてみると、白を基調としたこぢんまりした店舗の棚には、色鮮やかな洋菓子が並んでいる。エクレアには、コーヒーやチョコレートクリームの代わりに抹茶のクリーム。フランス人にはとても新鮮な組み合わせだ。柚子や黒ごま、小豆のような和の風味を生かしたミルフィーユやマカロンも提案されていた。

 欧米人になじみの洋菓子で使えば、和風の素材の「新しい」味を抵抗なく気軽に楽しめる。これがパティシエ青木の秘策だ。おかげでパリの洋菓子の定番に新しい風が吹き、その洋菓子は日本にも逆輸入された。

 こういう現象を知ってか知らずか、日本政府は海外の日本食レストラン認証制度なるものを提案していた。中には日本食とかけ離れた食材や調理法を使う日本料理店もあるので、認証で正しい和食の情報を広めようという狙いだ。

 でも、国が先に立ってやることだろうか。和食とはこういうものと決めつけてしまう制度によって潰されてしまう自由な発想があると思う。フランスの洋菓子協会が「フランス菓子認証制度」を導入したら、抹茶エクレアは「伝統的な洋菓子にない素材を使っている」と却下されたに違いない。構想が潰れて本当によかった。


Posted at 12:32 午前     Read More  

マグロの競り 


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スペイン語の観光ガイドブックには、「築地市場、特にマグロの競り見物は、東京観光には欠かせない」と書かれているらしい。先日、そんな情報をゲットしたスペイン人の知人に誘われて、築地へ行ってきた。

 久しぶりに来てみると、市場はすっかり様変わりしている。せっかくなので、友人には生の競りを見せたい。そう思って歩いていると、現場の人に「生のマグロを扱う場所は部外者立ち入り禁止だ」と言われ、隣の冷凍もののブロックに案内された。見物人の安全確保など、いろいろな理由があるらしい。

 十数年前に取材した時は、外国人はほぼゼロ。しかし今回はロシアや中国、米国からの観光客が大勢いた。そのうえ、観光客のために見学者用通路まで用意されていたのには、さらに驚かされた。どうやら市場を紹介しているのはスペイン語のガイドブックだけではないらしい。

 ここで取引されているマグロは、世界中から集まってきている。中にはスペインからのものもある、と友人に教えたら、スペインは現在、乱獲も影響して近海のマグロが減っているため、漁獲高を制限しているのだが……と首をかしげていた。

 市場の見学を終え、場外の寿司屋へ行った。注文したのは、当然マグロの刺し身盛り合わせ。今はこうして気軽に味わうことができるけれど、今後、資源保護の声が高まれば、簡単には口に入らなくなってしまうのかもしれない。未来を憂えながら、よく味わって食べた。


Posted at 09:05 午前     Read More  

 回転寿司


KaitenZushiDefW.jpg  回転ずしは、日本語が分からない外国人にとても便利だ。何も言わなくても、目の前で回るお皿をチェックしておいしそうなものに手を延ばせば、おなかが満足するまですしを楽しめる。しかも安い! 皆、最初はサーモン、卵、マグロなど、見た目が無難なネタを選ぶが、慣れてくるといろんな魚に挑戦する。

 僕自身も回転ずしが好きで、よく足を運んでいる。先週行った地方の大型回転ずし屋でのこと。食事が済んでお勘定を頼んだら、店員が近づいてきてポケットから携帯端末を出し、さっと空のお皿にかざした。すると、僕たちが食べたいろんな種類、いろんな値段のお皿の合計金額が、あっという間に計算されたのだ。思わず、仕組みを尋ねたところ、お皿の裏にICタグが付いていて、タグリーダーの端末をかざすだけで、どの値段のお皿が何枚重ねられているかを瞬時に計算できるそうだ。クール! 便利!

 この時僕は、十数年前に回転ずし屋で数字の暗号化を教えてもらった時のことを思い出していた。「一」は「ピン」、「二」は「リャンコ」、「三」は「ゲタ」など……他のお客さんに金額が分からないよう言い換えるという説明を、心遣いに感動しながら聞いたものだ。

 最近は僕をびっくりさせたこの店のように、タグリーダーを導入するところが増えているそうだ。それで業務効率が上がるのは良いことだが、そのためにもし、すし屋のロマンが一つ消えてしまうとしたらちょっと残念……。


Posted at 08:34 午前     Read More  

和風アイス 


 BeniImoIceCream-HN.17-CropW.jpg 夏にパリを訪ねるグルメな観光客はほぼ必ず、ノートルダム大聖堂の近くにあるアイスの名店「ベルティヨン」のシャーベットとアイスクリームを買い求める。3世代にわたってオリジナルアイスを作り続けている店で、野生桑の実や青リンゴのシャーベットは、フランス人にとっても夏の思い出とともにある味だ。

 ジェラートも、イタリアならではのオリジナリティを出す店が多い。トマト味、バジル味などで、僕のようなアイスファンをいつも楽しませてくれる。
 日本のオリジナル、和風アイスも最近かなり種類が増えた気がする。抹茶味、黒ごま風味のソフトクリームは今では定番になったし、醤油や塩味のアイスも買える。神楽坂下にある紅芋アイスは個人的に病みつきの逸品だ。行きつけの回転寿司のデザートには、一時ワサビアイスがあり、鼻にピリッと抜けるワサビの辛さがたまらなかった。また、恵比寿に用事がある時には、和風アイス専門店でカボチャ、甘納豆やサクラなどの味を楽しんでいる。
 この夏、フランスから初めて来日した友人は、生魚は苦手だったが、和風アイスには目(口?)がなかった。僕が思うに、アイスは異国の食文化入門に適した食品だ。想像もつかない味を一口思い切って試してみて、もし気に入ったら、その国の味や文化をさらに追求したくなるに違いない。
 その意味で、猛暑のこの夏一番クールなアイテムは和風アイスだったかも!?

Posted at 09:54 午前     Read More  

 食品サンプル


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 外国人観光客にとって、日本の飲食店の前に飾ってある、本物そっくりの食品サンプルは、とてもありがたい。

言葉が全然通じない国へ旅行に行った時、最大の冒険は、食事の時にあるかもしれない。おなかを空かせてレストランに入ったのに、出てきたメニューは読めない文字だけがズラッと並んでて、さぁ、何を頼んだらいいか、ちっとも分からない……辛うじて注文すると、想像と全く違うモノがテーブルに運ばれてくる。

 その点、店の前に食品サンプルがあれば、言葉が全く分からなくても、料理のボリューム、盛り付けなどのイメージを立体的に目で確認して、食べたいものを選んでから店に入れる。店員に言葉が通じない確率が高いので、一緒にサンプル前に行き、指さして示せば、間違いなく好きなモノを注文できる。

 もう一つ、食品サンプルは店の看板より雄弁に店を語る大きな役割を果たしている。サンプルの状態を見て、お店の雰囲気、やる気などを判断することができるからだ。分厚いホコリが積もっていたり、年月がたって日に焼けたサンプルが並んでいると、その店には入る気がしない。

 ちなみに食品サンプルは、外国人観光客の間ではお土産としても人気があって、僕も日本に遊びに来た知り合いを何回も、合羽橋の専門店に案内したことがある。

 日本以外の国では目にしたことがない、クール! そして便利! なアイテムだ。


Posted at 05:03 午後     Read More  

 居心地のよい店


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今回は、僕が日本の居心地の良さを一番感じるところを紹介したい。渋谷のんべい横町の焼き鳥屋さん「鳥重」のことだ。

 敗戦後間もなく開店した、4坪あるかないかの店。あまりにも人気の店なので、予約は一週間前が常識だ。


 安くて美味しいのは、言うまでもない。「柔らかいモツ」に山椒をかけ、「心臓」に柚子胡椒を少々など、メニューと食べ方も、それを「お母さん」が供する手順も、昔から決まっている。定員11人×3回の入れ替え制は、一人一人のお客を大切にしたいお母さんの心のあらわれだ。


この店では、そんな「お母様は神様」。最初の串が炭火のコンロに置かれない限り、どんなにのどがカラカラでも、飲み物の注文は御法度。欲張って多めに注文すると、「バラール氏、そんなに召し上がれますか?」と心配そうに注意される。


 串を焼く手が落ち着くと、お母さんは冗談を交えながらお客さん皆に声をかける。十八番は健康相談。無理して11人がやっと座れる狭い店で、皆が気持ちよく会話に参加し、日常的な心配事と時間を忘れる。


 ネオンがまぶしい渋谷駅近くで、ここだけは時間が止まったように感じられる。古い木造の、ガラス戸を引いて入るこの店を、超エキゾチックと感じる外国人もいるだろうけれど、僕の胃袋とともに心も引き寄せたのは、あふれる人情だ。この店がなくなったら、僕の渋谷のクール地図は大いに変わるだろう。


Posted at 06:42 午後     Read More