土曜日 - 3 月 28, 2009
このブログについて・・・
2007年の4月から、2009年3月末までに朝日新聞の夕刊に、毎週金曜日に掲載したコラム「エチエンヌのクール・ジャパン」のブログ版です。どうぞ楽しんでください。他のメディアでこの連載を継続するチャンスがあれば、このブログにも載せたいと思っています。定期的にチェックしてください。
ファンの皆さん、長い間、このブログを読んでいただいて、心から感謝しています。
Merci beaucoup !
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2007年の4月から、2009年3月末までに朝日新聞の夕刊に、毎週金曜日に掲載したコラム「エチエンヌのクール・ジャパン」のブログ版です。どうぞ楽しんでください。他のメディアでこの連載を継続するチャンスがあれば、このブログにも載せたいと思っています。定期的にチェックしてください。
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パリの日本語e学習
日本のマンガやアニメにのめり込んでいる外国のファンの中には、本格的に日本や日本語に目覚める人も多い。フランスの場合、パリのような都会に住んでいれば日本語学校もあるし、在仏日本人も多いから個人レッスンを依頼することができる。しかし地方在住の人はいくら勉強したくても、日本語を学べる環境どころか、まわりには日本人すらいない。地方在住者の日本語熱は冷めるのを待つしかないのか?!
そんなニーズにいち早く気づいたパリの老舗日本語教室Espace Japonは、動画と音声を組み合わせた独自の日本語教材を1年間かけてオンライン化し、昨年の暮れに学習サイトjeparlejaponais.comを開設した。
日本語学習のeラーニングは、僕の知っている限りこれが初めてだ。受講者は自分のレベルに合った教材に好きな時間に自由にアクセスし、自分のペースで学習を進めることができる。事前に予約すれば、ウェブカメラを通して日本人の先生からマンツーマンの指導を受けることができるから、発音のチェックもばっちり。
僕ものぞいてみたが、登場人物はいかにも日本人らしいし、場面の設定も日本の日常をよくとらえているし、日本語教育25年の蓄積が生きていると感心した。
クールジャパン・ブームの裾野はこうやって、さらに広がることになるのだろうか。まだ立ち上がって日が浅いが、今後の成り行きが楽しみだ。
アブダル・マリク
日本紀行今昔
僕が初めて日本に来た80年代後半、この国に関心を持った僕みたいな若者の旅は、辞書片手に何もかも1人で調べながらの冒険だった。パックツアーに参加するお金のなかった僕には、限られた滞在期間に、共通の趣味を持つ日本人と知り合うチャンスはまずなかったし、関心のあるイベントの情報を手に入れることもほぼ不可能。
ジャパン・エキスポ
今日から3日間、パリ郊外でジャパン・エキスポが開催される。今年で8回を数えるこのイベントは、フランス全国の日本びいきの人々にとってはずせないものだ。昨年は3日間で6万人強が参加し、今年はさらに増えて7万5000人の動員が予想されている。
昨年は、土屋アンナのコンサートや渋谷系ストリートファッションのショーが開催され、ファンが殺到した。今年は、元X.JapanのYOSHIKIの会見とサイン会やプロレス大会の他、武術、日本語会話入門、書道、カラオケ大会、コスプレ・コンクールなど、Jファン(日本にあこがれる若者)の関心は多彩だ。
十数年前、日本のマンガやアニメに関心を持つフランスの若者は少数派だった。彼らは定期的にパリ市内の日本人向け書店の前に集合し、情報交換をしていた。僕も何度か取材したことがあるが、その熱心さは今でも記憶に残っている。
当時、フランスのテレビや新聞が日本のサブカルチャーを伝えることはめったにない。しかしネットを通じて生の情報にアクセスできるようになった結果、Jファンと呼ばれる層ができあがるまでになった。彼らにとって、行きたい国ナンバーワンはもちろん日本。しかし、ほとんどがまだ、一度もあこがれの国を訪ねたことがない。そういうファンにとって、ジャパン・エキスポはパスポートのいらない日本への旅の始まりなのだ。
和紙はジャズ
東京・お台場に作られた特設会場「ノマディック美術館」で行われている「Ashes and Snow」展に行った。カナダ出身のアーティスト、グレゴリー・コルベールの大型写真50点以上と映像が展示されている(6月24日まで)。
コルベールは大自然の中の動物と人間の触れ合いを題材に、南アジア、アフリカ、南米などで、チータと老女、ゾウと少年などの交流を、15年間かけて撮り続けてきた。彼の写真の優れた点は、人間と野生動物の穏やかで心静かな瞬間を捕らえているところにある。両被写体の融和は、神秘的な体験とすら言える。
この展覧会を見に行ったもう一つの理由は、コルベールが作品のプリントに使っている紙に興味あったからだ。横長の作品でおよそ2.5×3.5メートル。すべて、手漉きの阿波和紙に写されている。大きさはもちろん、厚さや色みなどもコルベールの要請に合わせた特注品だ。
この有名なカメラマンに和紙の魅力を尋ねた。
「いろいろな素材を使ってみたが、和紙は僕の作品に一番合っている。題材と素材がぴったり融合しているのだ。光の写り方が他の紙とは全然違う。温かい、三次元的な表現ができるし、手作りなので同じモノは二度と作れない。和紙はジャズのように、アーティストの遊び心をもっとも表現できる素材だ」
日本の伝統的な技法を代表する和紙は今、意外なところに使われて、改めて評価されている。